本
森のなかのママ

井上荒野(いのうえ あれの)さんの本は、これで2冊目。
最初の出会いは、毎日新聞・日曜版の連載小説「その話は今日はやめておきましょう」だった。定年後、おだやかに暮らす夫婦の元に、青年が家事手伝いとして雇われる。そして、いろんな問題(?)が起こってヒヤヒヤしつつ、収まるところに、おさまるのだが・・・

ある時(「あちらにいる鬼」が出版される頃だったかな?)、井上荒野さんのお父様が、瀬戸内寂聴さんと恋仲にあって、世間を騒がせたという話を耳にし、荒野さんにとても興味がわいた。男女関係や不倫などに、どういった考えを持っているのだろう・・・?と。
そして、たまたま手に取って読んだ本が、これ、

森のなかのママ
著:井上 荒野
集英社文庫
亡き有名画家の妻とその娘が主人公で、その二人にとりまく男性陣が、愉快というか、適度な距離感で盛り上げている。有名画家は、旅行先の温泉宿で、「困った死」をとげた。その宿には、若い女性と二人で泊まっていたという。それから、5年後、母娘の元に、愛人が浮上してきて、さてどうなるか・・・といった話。「その話は今日は・・・」と同じく、ヒヤヒヤするのだが、いい感じで収まる。
まだ2冊しか読んでないけど、荒野さんの本は、読み終わった後、自分の中にある‘長きにわたりくすぶっている得たいの知れないもの’に対して、折り合いをつけてくれる気がする。
そして、何か心地よい風がひゅ~と吹き込んで、少し元気になり、「よしっ!」と掛け声をかけ、立ち上がれる。
「女たるものしたたかに生きよ!」と背中を押されているようだ。