Kannon
仏のKannon 鬼と化す

自転車で10分ぐらいのところに、温泉施設があって、腰の治癒とリラックスを兼ねて、たまに浸かりにいきます。
この施設は温泉とお風呂の他、岩盤浴やスポーツジムも併設されているので、カレンダーの赤い字の日や、世の中のお休みの日は混み合うので、私が行くのは、それらをはずした平日のお昼時。ほどよい感じで、人がいてゆっくり過ごせます。
先週木曜日に行った時、やたら人が多いのでびっくりした。『なぜに、こんなに多いんだ?』と思っていたら、理由はすぐわかった。中国語があちこちで飛び交っている。
『春節祭の余波が、こんなローカルなところにまで?!まあ、観光バス泊まるところはいっぱいあるし、すごいわね~』なんて思っていた。
露天風呂の温泉で、のんびりほっこりしていたら、少し離れたところにいるおばさまのところに、知り合いの人と思われる大阪のおばちゃんが声をかけて、しゃべりだした。
おばちゃん「あら、来てたん?」
おばさま「そう。でも、今日は人多いなぁ~」
おばちゃん「そやねん、中国人!ちょっと聞いてくれる?さっきな、中国人4人がな、床にべたーっとそのまま座って、しゃべりだして。あんなことされたら、迷惑やん!ロッカーつかわれへんし、通られへんし。」
おばさま「マナー、悪いもんなー」
おばちゃん「そやから、言葉わからへんし、こう、身振り手振りで、そこのいてもらうように(=その場所を移動してもらうように)こうやって、こうやってしてん(腰を屈めて追い払うようなジェスチャー)。そしたらな、その様子を見てた他の中国人が、私が意地悪してるように見えたんやろうなぁ~?大きい声で、わめき散らすねん。そいで、ちょっとすったもんだがあってな」
おばさま「けったいやな~」
おばちゃん「その子な『ワタシ ニホンジンデス!』って、何度も言うてるねん。しゃべり方が日本人ちゃうわっ!て、よっぽど言い返したろかと思ったわ」
武勇伝をどや顔で話する大阪のおばちゃん、ブラボーである。
話は変わって、私の家のお隣さんは、父と高校生の男の子2人が住んでいる。1年ぐらい前までは、奥さんもいたけれど、離婚し出て行ったようです。奥さんがいなくなってから、うるさく言う人がいないものだから、息子たちの友達が入り浸り、たまり場となり、時には『一体、何人人がいるんだ?』と思うぐらい声が聞こえる時もある。
ヤンキーのような子たちではなく、お勉強出来る感じでもなく、夏休みには、カラフルな頭に驚くこともあるけれど、昼間、外で会うと、挨拶してくれるし、ま、いまどきの高校生っ!って感じで、温かく見守ってはいたのだが。
彼らはバイクを足にしているようで、50ccの普通の原チャリならいいのだが、粋がりたいお年頃。ディテールやマフラー、エンジン音に個性的な細工をしている。
『うるさいなぁ~』と思う時はあるけれど、向かいに住む奥さんが、時折、注意や小言を言いに出てきてくれるので、私の出る幕もなく家の中から様子をうかがっている。
2週間ほど前、朝の3時頃なんとなく目が覚めた。起床までの残り90分、外の様子が気になって寝られない。男子2,3人がだらだら外でおしゃべりをしている。詳しくは聞き取れないが、時々、盛り上がったり、声が大きくなったりと。たまに、エンジン音が遠のいたり近づいたりし、気になって、布団の中で悶々とした時間を過ごすことに。(一度目)
我が家の前に、街灯があり、明るい。夜、ドアのカギを探すのに、玄関の明かりをつけなくてもよいし、何かと助かる街灯だが、男子高校生たちが夜、外でしゃべる時は、おのずと明かりのある所に集まる=家の前に人だかりができる。
10日ほど前の土曜日、隣の高校生と、その友達7,8人が夕方6時ごろからいつものように溜まりだした。しゃべり声やたまに、笑い声、LINEの呼び出し音、BGM代わりにエンジン音が鳴り、にぎやかな玄関先である。しばらくして、隣のお父さんが帰ってきて、息子2人と夜のドライブに出かけた様子。友達らも、車を見送り、解散するのかと思いきや、その後もずっと、だらだらしゃべり続けている。『人の家の玄関先を何だと思ってるんだっ!?』と、‘ふつふつ’したものが・・・。
ドライブの車を見送って1時間ぐらい経った頃だろうか、この‘ふつふつ’が、ぐつぐつ、メラメラなる前にと、8時頃、玄関をそっと開け、溜まってる彼らに、「そろそろ、お開きにしませんか?」と静かに話しかけてみた。根は素直な彼らは、「はーい」と言って、どこかへ散った。(二度目)
「仏の顔も三度まで」とは、よく言ったものです。この一週間後、三度目が早くもやってきた。
その日は、溜まりだすスタートからして、遅かった。金曜日の夜の9時頃から、なんとなく、話声がし、エンジン音もどこからかやってきて、家の前で鳴りやむが、人の声はそれなりに増えていく・・・。
大相撲十三日目、阿炎VS炎鵬の取り組みで、阿炎をつり出した小兵・炎鵬の勝利に興奮しながら晩酌して、そろそろ寝ましょうか・・・といった頃だ。
外が気になり、眠れず、『もうちょっと・・・。もうちょっと・・・』と、お酒もすすみ、酔いも回ってきて、気分はだんだん高揚してくる。頭の上、2か所が、ゆっくりふくれあがっていく感触さえ覚える。タケノコが土の中から出てくるように、にょきにょきと・・・。
時間も、そろそろ11時をまわろうかという頃、頂点に達した。
鼻息荒く、ずんずんと階段を降り、玄関の横の部屋にかけてあった、大判ストールを勢いよく肩に羽織り、バーンと玄関のドアを開けて
「あんたら、いい加減にしっ!いったい、何時やと思ってんの。寝られへんやろっ!警察呼ぶでっ!こっちは、朝早い仕事してるんやっ!昼間やったら、なんも言わんけど、こんな夜遅くまでおったら、迷惑やっ!!!」
と、うじゃうじゃした様子の溜まり場に向かって怒鳴った。その、勢いづいてよく通った大きな声は、夜の住宅地に響き渡る。きっと100m圏内のご近所さんたちにも聞こえたであろう私の声・・・。
いつも控えめで、やんわり挨拶するおばちゃん、怒ったら怖っ!!といった感じで彼らは、一瞬ぼーぜんと、玄関前にいる私をみつめ、「すみません・・・」と小さい声でいいながら、バイクを押して、それぞれに散っていく。
完全撤収するまで、頑として仁王立ち。そして、頭の上に2本の角がシャキンッ!と出っ張って、激しい形相でいる姿は、まさしく鬼のように見えたに違いない。
清楚で品位あふれるKannonが、彼らによって、「大阪のおばちゃん」に一歩近づいたような気がする。。。あぁぁぁ、、、泣
鬼は外!鬼は外!!

え?これ、角じゃないのよ耳なのよ、みみっ!
似てるけど、耳やでっ!にゃっ